- ニュース

バルセロナで開催されたMobile World Congress(MWC)における大きなトレンドの一つは、NFCに関する発表でした。NFCはAndroidスマートフォンやBlackBerryの一部機種でサポートされていますが、実用化はまだ進んでいません。しかし、NFCに関する数々の発表から、この技術の時代がついに到来するかもしれません。
噂とは裏腹に、AppleはiPhoneやiPadにNFCを採用する意向を示したことはありません。昨日のMWCでiPad 3の発表で他の企業を圧倒したにもかかわらず、AppleがNFCに対応していないことが、大きな問題として浮上する可能性があるかもしれません。
スマートフォンベースのデジタルウォレットの基盤としてNFCを採用するというアイデアは、テクノロジー業界では以前から話題となっていましたが、主流の製品として実現するには至っていません。その理由の一つは、ハードウェアや短距離通信プロトコルとしてのNFCが、電子ウォレットの構成要素の一部に過ぎないことです。
電子ウォレットとモバイル決済ソリューションの構築には、モバイルデバイスへのNFCチップの搭載やモバイルOSのNFCサポートだけでは不十分です。銀行やクレジットカード会社からの承認と連携、加盟店処理会社によるリーダーデバイスの導入、そして小売業者が各種電子決済リーダーをNFC対応にアップグレードすることが必要です。
NFCが広く普及するには、多くの条件が揃う必要があります。これまで、金融会社による小規模で、典型的には地域的な試験的な取り組みはいくつかありましたが、大規模でグローバルな取り組みはありませんでした。これが、AppleがNFCに関してあまり沈黙している理由の一つかもしれません。Appleは、この技術が実用的な製品へと成熟した兆候が現れるまで待っているのかもしれません。
MWCでNFCに関する発表がいくつかあったことから、米国でのさらなる試験運用や、世界中でこの技術を支援・推進するためのグローバルパートナーシップの形成など、まさにその時が来ているのかもしれません。今週初めにバルセロナから次々と発表された内容の一部をご紹介します。
- 大手クレジットカード発行会社3社がモバイルウォレットに向けて前進
- VeriFone、モバイルネットワーク事業者向けNFC POSソリューションを発表
- Visa、モバイル決済プロビジョニングサービスを発表
- サンタンデール、VisaとMasterCardの両方の決済に対応する初のNFCウォレットを発表
- インテルとVisaがモバイル決済の強化に協力
- LGがNFC搭載携帯電話2機種を発表
NFCはモバイル決済だけに限らないことも注目すべき点です。この短距離技術は、デジタルチラシ、デバイス間の情報交換、さらにはデバイスのデジタルキーとして機能する機能(Appleが将来のMacやiOSデバイス向けに検討していると噂されていた機能)など、様々な用途に活用されています。
これらの機能の中には、NFCの機能をスマートフォンだけでなく、タブレット、コンピューター、家庭用・業務用電子機器などにも拡張するものがあります。iPhone 4Sの発売時期を考えると、電子ウォレット機能はAppleにとって大きな失敗とは思えないかもしれませんが、iPad 3やiOS 5(または5.1)にNFCサポートが一部含まれていないのは別の話かもしれません。一方で、これはサードパーティベンダーにとって、iPhoneを中心にイノベーションを起こすチャンスでもあります。例えば、DeviceFidelityはIn2Pay iCaisse4でMasterCardのモバイル決済認定を受けています。